冬の日本海


私はまだ、全てのことを知るには、幼すぎる

私にはまだ、全てのことを理解するには、重すぎる。

凍てつく風  激しい波
その波は、全てを呑み込むほどの勢いを持ち、
全て、消し去る勢いを持つ。
氷の混ざる風の中に立ち、
人間のはかなさ、愚かさ、非力さを痛感する。

どれほどの想いを抱えていようとも、
希望も、絶望も、この波にはかなわない。

この壮大な景色でさえ、地球のほんのひとかけらで、
地球は、宇宙の塵にもならない。

自分の罪の意識に潰されることもなく、
誰かの犯した罪を責める気も失せる。

誰かにとって、重すぎる出来事も、
この海にとって、吹けば飛ぶようなもの、
或いは、元から無かったかのような大きさのものであること、
この海をも、氷に変えるこの風も、
いつまでも、これほど冷たく、
いつまでも、凍らせつづけるわけでもなく、
ある時点で、重すぎる出来事であっても、
いずれ、薄れ行くものであることを知る。


目の前の波と共に、消えてしまうのはとても簡単だろう。
波は、何も躊躇せず私を消し去り、
そこに、何も残りはしない。
いずれ、私が存在した事実も消してしまうだろう。
いくら、泣こうが喚こうがどこへも届くことはない。

受け入れるだけの大きさを持ちながら、
自然はどこまでも表情を変えず、
ここまで迎えに来ることはない








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